水鳥の羽根をふんだんに使ったふかふかのぶ厚い布団と、羊の毛を編んだやわらかく暖かな毛布。二人でくるまっていると尚のこと温かく感じるのは、気のせい、だろうか。
今晩は底冷えする夜で、湯上がりの身体を冷やしてしまわないよう、二人して早々に布団へと潜り込んだ。広々とした木製の寝台、並んだリンハルト気に入りの大きな枕。眠ることを好む彼が知恵を絞った寝所は心地よく、熟睡することが少なかったベレトを熟睡させてしまう。
「……お前と寝ると、眠りすぎる」
「お褒めに預かり光栄です」
朝、きちんと起きようと思っていても寝過ごすことが増えた。用事があれば起きられるが、特になければぼんやりと布団の中で過ごしてしまう。ちょっとした文句のつもりで言えば、リンハルトは上機嫌にベレトの頬を撫でる。
わかっているくせに、と思いつつも不満げに「褒めてはいないが」と告げるも、リンハルトには全く効果がないようで。
「貴方が僕の隣で眠りすぎるくらいに眠ってくれるだなんて、褒め言葉以外の何物でもないでしょう」
朝寝も昼寝もたくさんしましょうよ、約束通り。そんなふうに言う。
「約束したのは昼寝だけだったような」
「ええ? じゃあ、今ここで約束してくださいよ。朝寝も一緒にしてくれるって」
「うーん、それは……」
リンハルトの朝寝に付き合っていては、昼まで寝てしまう。そうすると起きたら遅めの朝食を摂って、今度は昼寝だ。流石にこの案に乗ってしまうのはまずい。まずいのだが。
「……週に一度くらいなら、まあ」
そう答えてしまったのは、この寝台の中があまりに心地よすぎるのが悪い。やはり、リンハルトのせいである。別に、甘やかしているわけではない、決して。誰ともなく言い訳をしてしまうのは、戦後彼と将来を誓ってから隠居に至るまでの期間で、散々周囲から『甘やかしすぎだ』と諌められたからかもしれない。
「本当ですか? 約束ですよ」
では早速明日から、と浮かれるリンハルトに対してベレトは、明日の朝が寒ければいいのにと願う。寒くて出られなかったのだ、と明日の自分が言い訳できるように。